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ある朝のこと

ある日、朝日を見ようと窓を開けた。
ふと左側を見ると、軒下に大きな蜘蛛の巣があった。
そこに体長5cmくらいのトンボのような羽虫が引っかかっていた。
羽虫は懸命にもがいて蜘蛛の巣から逃げようとしているが、強力な粘着力に捕らえられて
抜け出すことが出来ない。
日の昇らぬ薄暗さの中で糸を見抜くことが出来ず、引っ掛かってしまったのだろう。

いつからそこに掛かっていたのかは分からないが、
私が見つけてから15分程、もがいては力尽き、諦めたように見えてはもがきを繰り返している。
諦めようとはしない。
諦めたらそこで死が確定してしまう。
それが分かっているからか、もがいている勢いは蜘蛛の巣が切れてしまいそうなほどだった。
だがそれでも糸は切れないし、外れもしなかった。
じっと見ているうちに羽根もボロボロになってきて、
ああ、もう駄目なんだろうと思って目を離した。

私が助けてやることも出来るが、それは自然の摂理に反する行為であり
蜘蛛の側からしてみれば迷惑なことだ。
どちらか一方の味方にはなることが出来ない、申し訳ないと
窓を閉める前にもう一度見てみると、そこに羽虫の姿はなかった。
目を離して10秒程度のことだ。
羽虫は自力で蜘蛛の巣から抜け出すことが出来たのだと思う。
日はもう水平線から顔を出し、辺りを明るくしはじめていた。

それに何を思うのかは人それぞれだろうなと思うので、落ちはつけないで締める。